湘南ライナー乗車ルポ[ホーム編]
新幹線に見下ろされる形で存在する、東京駅10番線には30分おきに湘南ライナーが入線する。
ホーム上のライナー券売り場で券を買うのはお仕事を終えたサラリーマンあるいはOLばかりで、学生服にカメラ片手の呑気な輩は僕以外に見当たらない。
この1面2線の下り東海道線ホームには
左に、ラッシュ電車を待つ人々、
右に、530円でリクライニング席への着席権という家路までの安息の地を手に入れた人々が一堂に会する。
同じ行列でも訳が違うのである。
左の人々の顔はどことなくげっそりした表情に見えるがきっと気のせいだろう。
見る人が見れば格差社会の縮図とでも言うかもしれない。
最初のライナー列車、1・3号は見送り5号に乗る。
最初の2本は全車がBOXシートの二階建て。
僕が乗るのはリクライニングもする特急車両。
同じ料金を払うのに前者の人は気の毒だと思っていたが
1人で4人分のボックス席を占領して思い思いにくつろぐのを見て、普段使いしているだけあってやり手だなあと感服。変な食い意地を張ってホームで1時間待つ素人とは違う。
また手間を省くため乗車口は2つのみ開かれそこで集約して検札を行なっていた。
この際助役が、ドアを開ける車両のみ空気ブレーキを抜いて手動で開けていた。
やはり机上の想像だけでなく実地検分は楽しい。
しかし、通勤の原風景とも呼ぶべきこの光景もあと3ヶ月あまりで見ることが叶わなくなるかもしれない。
530円の料金で乗れていたこの湘南ライナーは
来たる2021年3月の改正で「特急 湘南」というネーミングセンスのかけらもない、ダイヤはそのままに料金だけは一丁前に値上げする特急列車に様変わりしてしまうのだ。
料金が倍近くにあがった特急列車で通勤する大人のつらつらはどんな思いで席に佇むのだろう。
元を取ろうと必死にくつろごうとするのだろうか。
値上げ幅は誤差の範囲と気に留めず乗るのだろうか。
サラリーマンのオアシスは鉄道会社の摂取の箱だなんて!
こんなのはあまりにも寂しいではないか!
オタク的な視点でいけば新幹線ホームと在来線ホームに2階建車両が並んだのは興奮に値する。
どちらも大量輸送を目的に製造されたが、すでに需要はなく、時代に取り残されて姿を消す運命にある車両…胸が熱くなる。
そんな2階建車両もこの時ばかりはその力をいかんなく発揮して発車していくのだった。
乗車編はあした公開します。